
近年、ドローンの活用は急速に拡大し、特に農業や林業分野では人材不足や高齢化問題の解決策として大きな期待が寄せられています。しかし、その普及に伴いドローン法律規制も年々強化され、知らないうちに違法行為となってしまうリスクが高まっています。
2024年の調査によると、農業分野でのドローン導入率は前年比30%増加していますが、同時に法律違反によるトラブルも増加傾向にあります。特に「飛行禁止空域での飛行」や「無申請での目視外飛行」などの違反が目立ちます。
ドローン法律を理解せずに運用することで、最悪の場合、50万円以下の罰金や1年以下の懲役といった厳しい罰則を受ける可能性もあります。このガイドでは、ドローンを安全かつ合法的に活用するために必要な法律知識を、特に農業・林業での活用に焦点を当てて解説します。
航空法はドローン規制の基本となる法律です。2015年の改正により、無人航空機(ドローン)に関する規制が追加されました。
主な規制内容:
•飛行禁止空域:
•飛行の方法:
上記の条件に該当する場合は、国土交通省への許可申請が必要となります。農薬散布や種まきなどの作業では、「物件投下」に該当するため、申請が必須です。
2016年に施行された「小型無人機等飛行禁止法」は、重要施設の周辺におけるドローン飛行を規制しています。
対象となる重要施設:
• 国会議事堂、内閣総理大臣官邸
• 最高裁判所
• 皇居や御所
• 外国公館(大使館など)
• 原子力事業所
• 防衛関連施設
これらの施設の周囲おおむね300mの範囲内でのドローン飛行は原則禁止されています。違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
道路交通法は、道路上でのドローンの離発着に関係します。
• ドローンを道路上で飛行させること自体は道路交通法では規制されていません
• しかし、道路上でドローンを離発着させる場合は、「道路使用許可」が必要
• 所轄の警察署に申請を行い、許可を得る必要があります
農業や林業での活用時、道路を挟んだ場所での作業が必要になることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
ドローンのリモコン操作には無線通信機器を使用するため、電波法の規制対象となります。
農業・林業用ドローンを選ぶ際は、必ず技適マークの有無を確認しましょう。
民法第207条では「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と定められています。
• 私有地の上空をドローンで飛行させる場合、土地所有者の許可を得る必要があります
• 無断で飛行させた場合、所有権侵害として訴えられる可能性があります
• 農地や森林の上空を飛行させる際は、事前に土地所有者または管理者の承諾を得ることが重要です
農業分野では、ドローンは主に農薬散布、生育状況の確認、土壌分析などに活用されています。特に近年は規制緩和により、その活用の幅が広がっています。
2019年以降、農業用ドローンの普及を促進するため、以下の規制が緩和されました:
1.補助者の配置義務の緩和:
2.目視外飛行の許可条件緩和:
3.夜間飛行の条件緩和:
これらの規制緩和により、少ない人員での効率的な農薬散布が可能になりました。
農業用ドローンを運用する際に必要な法的手続きは以下の通りです:
1.国土交通省への飛行許可申請(通称:DIPS2.0):
2.地域住民への周知:
農業用ドローン導入時には、さまざまな補助金制度を活用できます:
•スマート農業技術の開発・実証プロジェクト
•スマート農業総合推進対策事業
•持続的生産強化対策事業
•各都道府県独自の補助金制度
補助金申請時には、ドローンの法律規制に準拠した運用計画の提出が求められることが多いため、事前に法規制を理解しておくことが重要です。
林業では、広大な森林の管理や資材運搬など、様々な場面でドローンが活用されています。
1.森林調査・測量:
2.苗木・資材の運搬:
3.病害虫・獣害の監視:
林業ではICT技術と組み合わせたドローン活用が進んでいます:
• 森林クラウドと連携した森林管理
• レーザースキャナー搭載ドローンによる立木調査
• 3Dマッピングによる施業計画の効率化
これらの技術を活用する際の法的ポイント:
• データ取得のための長時間飛行や目視外飛行には国土交通省の許可が必要
• 取得した画像データに第三者が映り込む場合、個人情報保護法に留意
• 国有林内での撮影には事前許可が必要な場合がある
林業でのドローン活用を支援する制度には以下があります:
• 林業・木材産業成長産業化促進対策
• スマート林業構築実践事業
• 森林整備事業
これらの支援制度を活用する際も、ドローン法律に準拠した運用計画の提出が求められます。
農業・林業でのドローン活用には、多くの場合、国土交通省への飛行許可申請が必要になります。ここでは具体的な申請手順を解説します。
飛行許可申請の手順(DIPS2.0)
1. 申請書類の作成:
2. 審査と許可:
ドローンの飛行許可申請には、「包括申請」と「個別申請」の2種類があります:
包括申請:
• 一定期間(最長1年)、同一の条件で継続的に飛行する場合に適用
• 農薬散布や森林調査など定期的に行う作業に適している
• 一度の申請で複数回の飛行が可能
個別申請:
• 特定の日時・場所での飛行のみを申請
• イベントでの撮影など一時的な飛行に適している
• 飛行の都度、申請が必要
農業・林業での活用では、包括申請を行うことで手続きの負担を軽減できます。
農薬散布ドローンを使用する場合は、以下の追加要件があります:
1. 「危険物の輸送」と「物件投下」の許可:
2. 散布計画書の提出:
3. オペレーターの資格:
ドローン法律違反は厳しい罰則の対象となります。主な違反事例と罰則、そして対策を紹介します。
主な法律違反と罰則
違反内容 | 適用法律 | 罰則 |
許可なく禁止空域で飛行 | 航空法 | 50万円以下の罰金 |
重要施設周辺での飛行 | 小型無人機等飛行禁止法 | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
技適マークのない機体の使用 | 電波法 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
無許可での道路上離発着 | 道路交通法 | 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
落下事故による人身傷害 | 民法(不法行為) | 損害賠償責任 |
事例1:農薬散布中の隣接農地への飛散
• 状況:無風と判断して農薬散布を行ったが、微風により隣接する有機農業圃場に農薬が飛散
• 結果:有機JAS認証取り消しの危機、損害賠償請求
• 教訓:散布前の風向き・風速の確認と、十分な緩衝地帯の設定が重要
事例2:林業調査中の国有林無許可侵入
• 状況:森林調査のため目視外飛行を行い、隣接する国有林に侵入
• 結果:行政指導と飛行許可取り消し
• 教訓:飛行計画の綿密な策定と境界の確認が必要
事例3:バッテリー切れによる墜落と車両損傷
• 状況:バッテリー残量を誤認し、飛行中にバッテリー切れで道路上の車両に墜落
• 結果:車両損傷の賠償責任と道路交通法違反の罰金
• 教訓:バッテリー管理の徹底と、余裕を持った飛行計画が重要
1. 事前の情報収集:
2. 飛行計画の通報・飛行日誌の作成:
o 飛行時に飛行の日時、経路、高度等の情報をDIPS2.0を通じて報告
o 飛行場所、飛行時間、整備状況等の情報を日誌(飛行記録及び点検・整備記録様式)に記載
o すべての操縦者は人の死傷、物件の損壊、航空機との衝突等の事故が発生した場合に国土交通大臣に報告
3. すべての操縦者は、自身が操縦する無人航空機によって人が負傷した場合に、その負傷者を救護保険への加入:
4. 定期的な法改正チェック:
5. 専門家への相談:
ドローン法律を理解し遵守することは、農業・林業分野での持続的なドローン活用の基盤となります。以下のポイントを押さえて、安全かつ合法的にドローンを活用しましょう。
1. 事前の許可申請を忘れずに:
2. 最新の法改正情報を常にチェック:
3. 安全管理体制の構築:
4. 地域との協調:
5. 専門家のサポート活用:
マゼックスでは、農業・林業用ドローンの導入をトータルでサポートしています。特にドローン法律に関する煩雑な手続きを軽減するため、以下のサービスを提供しています:
•国土交通省への飛行許可申請代行(有料)
•補助金申請アドバイス
初心者でも安心して利用できる高性能ドローンを豊富に取り揃え、全国の販売店でフライトデモや説明を受けることができます。
ドローン法律に準拠した安全な運用で、農業・林業の生産性向上を実現しましょう。
ドローン法律に関するご質問や、農業・林業向けドローンの選定についてのご相談は、以下の窓口までお気軽にお問い合わせください。
•電話: 072-960-3221
•メール: 問い合わせフォーム
•展示場: 全国の販売店でデモフライトも可能です
※本記事は2025年4月時点の法律情報に基づいています。法律は改正される可能性がありますので、最新情報は必ず公的機関でご確認ください。