近年は少子高齢化による労働力不足の影響で、農家にとって人手不足が深刻な問題となっています。多くの農家にとって農薬散布は必要不可欠な作業の一つですが、特に労力と時間を必要とする作業でもあります。
ドローンが登場する以前の農薬散布は、手作業や農薬噴霧器、レンタルした無人ヘリでの作業でした。しかし現在ではドローンを活用した農薬散布が主流になってきています。
本記事では、農薬散布ドローンの活用メリットや、レンタルできるのか、ドローンをレンタルする際に注意したいポイントついてご紹介していきます。
目次
ドローンといえば娯楽用で利用されるのがほとんどでしたが、近年では農業をはじめ産業用としても幅広く活用されるようになりました。産業用ドローンの始まりは1980年代で、農薬散布ができるドローンは2000年に入ってから誕生しました。
そして2010年代になると取り扱いやすい小型のドローンが登場し、昨今は廉価なドローンが発売されるようになりました。これに伴い一般的な農家での導入ハードルも下がり、ドローンを購入する農家が増加しています。
さまざまな課題を解決するためのツールとして注目を集める農薬散布ドローンですが、本当に良いの?と感じている方も多いと思います。そこで、まずは農薬散布ドローン導入のメリットを簡単にご説明します。
多くの農薬散布用のドローンでは1haを10分程度で散布し終えることが可能です。そのため手作業や農薬噴霧器に比べ、散布作業の時間削減につながります。またこれまでの手作業や農薬噴霧器での作業に比べると、5分の1程度の作業時間になります。
また無人ヘリは機体が大きく、重量もあるので準備や移動にも作業者を増やす必要があり、コスト面がネックです。しかしドローンを使用した場合、基本的には操縦者、もしくは操縦者と散布作業の補助者で行えるので、人員や労力を削減でき効率化につながります。
ドローンを農薬散布に使用することで、広い農地であっても短時間かつ少人数で散布作業が可能なので、人的コストの削減にもつながります。さらに無人ヘリよりも至近距離での散布が可能で、少ない農薬でより高い効果を得られます。
農薬散布を業者に委託した場合は、「適期防除ができない」「雨天の場合、長期延期になる」「一刻も早く防除したい」などのお悩みがでてくると思います。
しかし、農薬散布ドローンを持っていれば、いつでも好きな時に散布できるので作物の品質を保てます。
ドローンは産業ヘリと比較し軽量・コンパクトなので、1人で積み下ろしできます。また小回りが利くので中山間などの産業ヘリではできなかった10aの圃場でも散布が可能です。(10a≒1反)
バッテリーで飛行するので騒音も少なく、住宅付近でも早朝から飛行でき、時間を有効活用できます。
ここ数年で農業用ドローンの普及も少しずつ進んできたのもあり、農薬散布ドローンのレンタルサービスも増えてきました。
1日のレンタルから1週間、1か月のレンタルまで、期間もさまざまあって、必要な期間だけレンタルできるのは良いことですが、レンタルする際には注意しておきたいポイントもいくつかあるのでご紹介します。
農薬散布ドローンを利用したことがない方については、機体をレンタルで入手したからと言って、利用できるわけではありません。
ドローンで農薬散布する場合、飛行させる予定日までに国土交通省から飛行許可を取得する必要があります。その要件としては、操縦者に「10時間以上のドローン飛行経験と5回以上の物件投下実績」があることで、ないと飛行許可申請がおりません。ですのでレンタル/購入問わず、初めて農業用ドローンを使用する際は、まず飛行許可申請の要件を満たしている必要があります。販売店やレンタル業者によっては、ドローンスクール(教習所)で講習を受講することが前提条件となっている場合もあります。
ドローン未経験でレンタルから農薬散布ドローンを使ってみたいという方は、ドローンスクールで講習を受講しておくか、操縦者(オペレーター)派遣のサービスを利用するようにしてください。
レンタル業者のドローンの在庫には限りがあります。「そろそろ除草剤を散布したいからドローンのレンタルを手配しようかな」と思ったときには、同じ農作物を生産している他の方々も同様にそう思っている可能性があり、借りたいタイミングで在庫がないので借りられないという事態になる可能性もあります。
必要な期間だけ借りられるのがレンタルのメリットですが、手配が遅れると借りられない可能性があることには注意が必要です。
機体をレンタルで入手したからいつでも好きなようにドローンを飛ばしても良いというわけではなく、農業用ドローンを飛行させるためには、事前に「ドローン情報基盤システム(DIPS)」から国土交通省へ飛行許可・承認申請を行う必要があります。飛行申請をしたことがない方、慣れていない方などは、飛行申請を代理で行ってくれるレンタル業者もありますので、問合せてみてください。
また、保険についても契約時に必ず確認しておきましょう。ドローンを購入して、操縦に慣れている方でも、万が一の事故に備えて機体の損壊の補償(機体保険)や、対人・対物の損害賠償等(賠償責任保険)に加入されています。レンタル契約に保険がついているかどうか、保険の補償内容はどのようになっているかを確認し、必要であれば、自身でも保険に加入することをおすすめします。
農業用ドローンを必要なときにだけレンタルすることは、コストも抑えられて良いこともありますが、操縦に慣れないドローンを扱う危険性や、レンタルできるかどうかわからないという不確実性のリスクがあります。できれば自身で購入して、慣れた機体を扱うほうが安全です。コストが気になる方は、購入時に助成金を利用できないか、リースで機体を入手できないか、などをシミュレーションしてみると良いでしょう。手持ちのドローンが修理中で使えない場合や、普段からドローンを操縦しており、台数が不足している場合などにレンタルサービスを利用するのはおすすめです。操縦が不安な方は、オペレーター(操縦者)の派遣サービスなどもぜひ検討してみてください。