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ドローンスマート農業とは何か、現状の活用事例やメリット・デメリット

スマート農業とは何か、現状の活用事例やメリット・デメリット

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2023.11.17

「スマート農業」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、スマート農業とは具体的に何なのかご存じでしょうか?
今回は、スマート農業とは何か、現状の活用事例やメリット・デメリットなどについてお伝えします。

目次

スマート農業とは

スマート農業とは、ざっくりと「IT技術を活用して行う農業」と認識しておいて問題ありませんが、農林水産省は、スマート農業について

「農業」×「先端技術」=「スマート農業」

すなわち、「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業のこと」と定義しており、生産現場の課題を先端技術で解決することを目指してスマート農業の推進を行っています。

日本の農業分野は、農業の担い手が減少していたり、高齢化が進行していたりすることによって、労働力不足が課題と言われて久しいですが、農林水産省の農林業センサスによると、1985年と2020年の35年のあいだに農業従事者数は3,464,641人から1,363,038人、およそ4割近くに減少し、そのうえ、農業従事者の年齢層も2020年には70歳以上が5割以上を占めるようになっています。

年齢別基幹的農業従事者数

 

e-Stat 農林業センサス「年齢別基幹的農業従事者数」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500209&tstat=000001016170&cycle=0&tclass1=000001203320&tclass2=000001203321&stat_infid=000040038990&tclass3val=0

 

このように、農業従事者の減少および高齢化が進むなかで、農業は依然として労働集約型産業で、さらに熟練のスキルが必要な作業も多く、人手の確保、各作業の省力化や負担の軽減が重要な課題であると言われています。
そこで、農業分野にも政府が提唱する「Society5.0」を実現し、農業現場の課題を先端技術で解決するべく、スマート農業を推進しています。

では、スマート農業を活用することで農業はどのように変化していくのでしょうか。

  • ① 農作業の労力軽減、省力化

    重たい機械を背負って農薬を散布していたものが、農業用ドローンによってリモコン操作や自動飛行で散布できたり、トラクターや田植え機、コンバインなどが自動運転で作業したりすることで、労力軽減、省力化することができます。また、急な斜面など危険を伴う現場での作業もロボット等が行うことで、安全性を向上させることも可能となります。

  • ② 品質の向上や熟練のスキル継承の簡略化

    センサーを用いて水田の水位や農作物の生育状況、害虫の発生状況などを把握し、そのデータを分析していくことで、農作物の品質向上に役立ったり、収穫量の増加に繋がったりします。また、熟練者しか見分けることができなかった判別作業などは、数値化することで簡単に判別できるようになり、長年積み上げられたスキルがなくても作業に就くことができるようになります。

  • ③ 新しい就農者の発掘

    従来の農業と働き方が変わることにより、新しい就農者を発掘できる可能性があります。特に、農業用ドローンやセンシング技術を活用できる、ITに強い人が農業に興味を持って就農される可能性や、作業の省力化が進むことによって、女性が活躍できる場面も多くなります。

  • ④ 食料自給率の改善

    ①~③により、農業従事者の増加や省力化によって耕作放棄地の有効活用が進むことにより、収穫効率が改善されることで、ひいては食料自給率の改善につながることも期待されます。

  • ⑤ 環境負荷の軽減

    センシング技術によって、適切な時期、適切な場所に適量の農薬を散布することができるようになり、その結果、環境負荷の軽減につながります。
    農林水産省は、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現することを目的とする「みどりの食料システム戦略」を策定しており、本戦略においてもスマート農業は重要な役割を担うと見込まれ、戦略推進に係る費用を補填する交付金制度もあります。

    農林水産省「みどりの食料システム戦略」https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/#Midorisennryaku

  • ⑥ 生産コストの削減

    ⑤のように農薬の散布量が減少すると、その分生産コストが下がります。また、センサーで得られた品質データを分析していくことで生産性向上につながったり、省力化によって1人あたりの作業効率が向上したりすることによって、同じ収穫量に対する人件費がより安価に抑えられることも期待できます。そして結果的に、全体的な生産コスト削減にもつながっていくと言えます。

スマート農業の推進で得られる効果

スマート農業を推進することで得られる効果として代表的なものは以下の2つです。

  • ① 自動化

    農作業においてスマート農業の自動化技術が活躍する場面はさまざまです。トラクターや草刈り機などが無人で自動運転されたり、センサーが圃場の状態を検知して自動で最適な量を散水・散布してくれたりします。また、収穫の場面においては、適切な大きさに育った農作物を自動選別して収穫します。
    自動化されることによって省力化につながることはもちろんですが、センサーの自動検知技術によって、作物の品質向上や生産性の向上にもつながっています。

  • ② データ活用

    スマート農業において得られるデータ情報もさまざまです。センサーやドローンなどの端末から得られたデータを収集し、それらを解析することによって、品質向上や生産性向上につなげることも可能です。
    例えば、今まで熟練のスキルを持った人にしか見分けることができなかった追肥のタイミングや収穫のタイミングなど、作物の状態を数値化することによって、キャリアの短い人でもそのタイミングを簡単に把握できるようになります。
    気象予測のビッグデータと水田に設置されたセンサーから得られるデータを組み合わせて解析することで、最適な水量を管理し、自動調整する技術などもあります。また、ドローンが圃場の空中を飛行して収集したデータから農作物の生育状況をデータ化し、追肥に最適なタイミング、量を提案してくれる技術、虫食いの葉を撮影することで病害虫をAIが自動診断する技術など、活用の幅は広がっています。

スマート農業の代表格、農業用ドローンとは

スマート農業という言葉からイメージされる技術のうち、代表的なものの一つに「農業用ドローン」があります。
農業用ドローンとは、農作業に特化した機能をもつ無人航空機で、主に農薬や肥料の散布や、圃場の監視を目的に活用されています。

コントローラの操作によって圃場の上空を飛行して、ドローンで農薬散布したり、撮影ができたりするので、人が圃場を歩き回って作業する必要はなく、作業時間の短縮や重労働からの解放、危険な場所での作業を減らすことができます。

農業用ドローンは、大規模な農場で利用されるような無人ヘリコプターよりもコンパクトなものが主流です。小型のものだと、縦・横・高さが各1m以内に収まるサイズ感のものもあります。重量も、バッテリーを含めて6~7kg程度で、中山間地などの狭くて傾斜の多い圃場でも扱いやすいモデルも存在しています。

ドローンによって作業効率も大きく改善されます。人力で農薬散布機を担いで10haに散布すると2日かかっていたところが、ドローンを使って散布すると半分以下の時間で完了したという方もいらっしゃいます(圃場の形状などによって差はあります)。監視用のドローンの場合は、取得したデータをそのままクラウドに送信することで数値化したりグラフ化されたりするので、収穫すべき場所や病害対策をすべき場所をすばやく見つけることができ、効率良く作業することができます。

マゼックス飛助DX/MG 愛用者インタビュー 農業用農薬散布ドローン:https://youtu.be/CLa3AzlCqZQ

農業用ドローン(農薬散布用ドローン)の選び方とおすすめ機種3選!:https://mazex.jp/blog/merit.html

スマート農業が抱える現状の課題

このように、スマート農業は目まぐるしい進化を遂げている一方で、課題も散見されてきました。

  • ① スマート農業の技術を活用できる人材が不足している

    冒頭にも述べたように、現在、日本国内の農業従事者の5割は70歳を超えています。現状の作業がラクになるからといっても、新しいことを覚えようとする意欲があまり高くない人や、先端技術の導入に抵抗感を持たれている方も少なくありません。そのため、スマート農業の技術を活用できる人材が不足しており、新しい技術を開発しても、なかなか活用されていきづらいというのが現状です。
    農林水産省では、農業用ドローンの普及拡大の協議会(農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/drone.html)を設立したり、スマート農業の技術を活用できる企業や人材が、農家の人を支援する仕組みづくり「次世代型農業支援サービスhttps://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/nougyousien.html)」の定着を推進したりすることで、スマート農業の拡大を推し進めています。

    農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/drone.html
    農林水産省「次世代型農業支援サービス」:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/nougyousien.html

  • ② 導入費用が高いこと

    農業用ドローンの購入など、スマート農業を活用するためにかかる費用は、一般的な農機具導入コストに比べると割高となるケースもあり、費用に見合った活用ができるかどうか不安に感じられる方も多いようです。
    そういった初期費用の補填として、国や地方自治体が補助金を給付する制度が設けられている場合もございますので、ご自身が利用できる補助金があるかどうか調べて、ぜひ活用していただきたいと思います。

    補助金例:
    農林水産省「農業支援サービス事業インキュベーション緊急対策事業費補助金」:https://www.zennouki.org/data_files/view/106

    【2023年最新】地域・団体利用可能!農業用ドローン向け補助金2種類:https://mazex.jp/blog/group-subsidies-2023.html
    【2023年最新】個人利用可能!農業用ドローン向け補助金2種類:https://mazex.jp/blog/individual-subsidies-2023.html

SDGsとスマート農業

スマート農業の技術を活用して、これからの農業を進化させていくことは、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献できます。「2:飢餓をゼロに」の目標で扱われているターゲットには、飢餓や栄養不良の人々をなくすことや、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実線することなどが挙げられています。
日本の人口は減少傾向にありますが、世界人口はまだまだ増加し続けており、輸入に頼る農作物の入手が困難になるなど、世界中の食料の流れは大きく変化する可能性があります。
また、国内においても、農作放棄地の増加は1つの社会課題となっており、スマート農業の活用によって生産性が向上したり、農業への新規参入者が増加したりすれば、農作放棄地を減らすことにもつながります。

まとめ

これまで述べたように、スマート農業の普及は、農業という1つの産業の発展にとどまらず、社会のあらゆる問題解決の一助になります。
スマート農業における先端技術をうまく活用して、農業という産業全体が、持続可能でより生産性の高い、魅力的なものになることを願ってやみません。