これまではドローンは、主に娯楽用や空撮用として利用されることの多い傾向にありました。そんなドローンですが、遠隔操作や自動飛行の技術が進歩したことにより、近年さまざまな業界で活躍の幅が広がりをみせています。
特に農業や点検、物流の分野で、産業用ドローンは顕著に活用されています。今回はさまざまな業界で活躍するドローンの紹介と、ドローンが注目される背景や業界・市場について詳しく解説します。
ドローンとは、遠隔操作や自動運転が可能な無人航空機のことで、一見するとラジコンヘリコプターと似ています。
ラジコンヘリコプターは操縦者が必要な手動操作航空機です。そのためラジコンヘリはドローンのようにGPSやセンサーなどが搭載されておらず、自律性のない点が大きな違いとなります。
ドローンには娯楽用から空撮用、産業用とさまざまな種類があります。元々ドローンはトイドローン・ホビードローンとして、安価に購入できる娯楽用の無人航空機が主流でした。
機体は200g以下、価格は1万円前後で、ただ飛ばすだけではなく、空撮が楽しめるものもあります。そして一般的にドローンと呼ばれるものは200g以上の重量で、価格も比較的高い機体となります。またホビードローンの中にも4K撮影が可能など、本格的なドローンもあります。
そして近年はドローン技術の進歩により、産業用ドローンが増加。農業用ドローンや点検・監視用ドローン、災害支援活動用ドローンや物資運搬用ドローンと、その活躍の幅は多岐にわたります。
近年ドローンの注目度は急上昇しており、その大きな要因となっているのが産業用ドローンの進出です。産業用ドローンは技術の進歩もあり、さまざまな業界が抱える課題を解決する糸口として期待されています。
たとえば日本では、少子高齢化による労働人口の減少が課題となっています。マンパワーが必要な農業や運送業では、多くの企業が人手不足の状況です。そこで無人飛行が可能なドローンが人の手に代わって稼働することで、人手不足の解消に貢献します。
また人の手では時間のかかる作業でも、ドローンが代行することで作業時間の短縮にも貢献し、生産性の向上にも期待できます。さらに災害時の捜索や危険な場所の作業などにもドローンを導入することで、作業の安全性向上も可能です。
GPS性能の向上や自動飛行の正確性が向上により、ドローンは各産業界の課題解決に貢献する存在として注目されているのです。
上記のような背景があり、ドローン業界・市場は今後も急成長が見込まれています。ドローンの売り上げは2020年〜2025年にかけて倍増すると予測され、2025年までに428億ドル規模に成長すると言われています。
これは世界だけでなく、日本市場においても同様。インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2020」によると、国内のドローン市場規模は2019年度から2025年度にかけて約4.6倍になると予測されています。市場の成長には産業用ドローンが大きく関係しており、今後も技術の発達や業界での実証実験が進むことで、さらなる飛躍に期待できます。
ドローンを産業活用するには法律や安全面の理由からまだ多くの課題はあるものの、各業界で実証実験も進んでいます。すでに本格的に活躍しているドローンも多く、今後の産業界を担う重要な存在になる可能性を秘めています。
ここではドローンの活躍が期待される3つの業界から、実際にドローンがどのように活躍しているかをみていきます。
農業は、ドローンが活躍する主要な業界です。「ドローンビジネス調査報告書2020」によると、2019年度は全産業のうち農業が全体の43%を占めています。
具体的には農薬散布や害獣対策、農作物管理の可視化や運搬など、あらゆる分野で力を発揮しています。特に農業は人手不足や担い手の減少が大きな課題となっており、ドローンがこれらの課題を解決する存在として期待が高まっています。
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点検は今後ドローンの急成長が期待されている分野であり、2025年度までには最も主要となると予測されています。点検は立ち入れない場所や危険な場所など、人の手ではできない・難しいシーンも多くある作業です。
そのため遠隔操作でき、かつ無人飛行が可能であるドローンとは親和性が高いのです。実際の活用事例を見ると、2021年1月には株式会社自律制御システム研究所とアルビド株式会社が共同で、ドローンによる風力発電機の点検サービスを開始。
これまで望遠カメラを使って点検していた風力発電ですが、ドローンが代替することで点検時間の短縮や点検の精度向上、そして発電機を停止せずに点検が可能となりました。
物流もドローンと相性の良い業界であり、今後の急成長が見込まれています。物流業界にドローンを導入することで、長年の課題でもある人手不足や交通渋滞の解決に期待できます。
実際に多くの物流企業がドローンによる運搬の実証実験を開始しており、ドローン導入の本格化に向けて動きを見せています。たとえば楽天株式会社では、期間限定ではあるものの離島へのドローン商品配送サービスを提供していました。
技術の進歩に伴い、ドローンはさまざまな業界であらゆる課題解決に貢献できるとして活躍が期待されています。
農業のようにすでに本格的に運用が開始している業界もあり、今後は物流や点検など幅広い業界でもドローンが当たり前の存在となるでしょう。今回ご紹介した業界以外でもドローンで課題が解決できる、あるいは新しい価値が創造できるかもしれません。